映画『淵に立つ』を観て

映画『淵に立つ』を観て

現在公開中の『よこがお』が’いい’と知人に勧められている。

あいにく劇場にまだ行けないので、NETFLIXで同じ深田晃司監督の作品を観ることにした。

淵に立つ

両方とも筒井真理子さんが出演されているというのと

『よこがお』を観た人の感想の中には、比べて『淵に立つ』のほうがよかったと絶賛している人もいるので、まずは観ておこうと思った。

カンヌ国際映画祭で深田晃司監督が世界的に知られるきっかけになった作品のようだ。

出演は、浅野忠信さん筒井真理子さんご主人役の方、娘と従業員くらいで、登場人物はかなり少ない。

場面ば、一人娘がオルガンを練習する一家の穏やかなシーンからはじまる。

陰のある、浅野忠信さん演じる人物を家に迎え込むことから、展開がまったくよめず、引き込まれていく。

まず、浅野忠信演じる人物は謎めいた、危うい様相なのだが、彼はいったい何者なのか?

主人はその突然の謎の来客を、妻の了解もとらずに受け入れることにしたが、その理由はなぜなのか?

知りたいと思わせられる。

妻は最初は疎ましく思いながらも、プロテスラントの宗教感をもつことから、優しく受け入れる。

謎と陰鬱な怪しさに、一家にも影響が及びそうな危うさを感じさせながら、話がすすむ。

ひとつ疑問が明らかになったとしても、更に疑問は続く。

待ちに待った娘のピアノの発表会、

ようやく幸せの象徴の日が来るのだ。

疎ましい人物が去り、あの日はどうなったんだろう?と思っているところに

また新たな人物が登場する。

ただ違うのは、陰のある人物とは対象的な、明るい好青年。

これで、ホッとさせてくれるのだろうと期待は膨らむ。

 

とにかく、重なる疑問と展開に、結末がまったく想像できないまま、最後まで連れて行かれた。

 

なにより、筒井真理子さんには驚かされた。

最初は穏やかな、優しく、見かけもとても美しい妻。

しかし展開がすすみ、状況も年齢も変化していくにつれて、精神的にも追い込まれ、肉体的にも疲れきったお母さんに変貌している。

美しく優しいお母さんから、子供を守ることに徹して人生を捧げる母親は、たくましくなっているのだ。

8年を経過した年齢・状況・精神の変化を、みごとにまで演じている。

受け入れざるを得ない状況が降りかかってくるのはなぜか?

この一家が救われることを期待してエンディングを迎えた。

すばらしい演者と内容だった。

 

深田晃司監督の最新作『よこがお』。

大いに期待して観に行こうと思う。

淵に立つ