いつもの毎日に、ちょっぴり好奇心を
4世代10人が集まる夏。
帰省ごはんは「引き算」で決まった。
上は89歳、下は1歳7か月。完璧だと思ったのに、決定まで4回かかりました。
夏休みの帰省。
実家に、娘一家と一緒に帰ります。
8月13日の夕方から、16日の朝まで。3泊4日。
INTRO
上は89歳、下は1歳7か月
まずは、顔ぶれを書き出す
- 母 89歳
- 私 66歳
- 娘夫婦 38歳と37歳
- 孫息子 3歳と1歳7か月
- 姉 68歳
- 姪 32歳
- (8月15日の晩だけ)姉の夫と姪の夫
この一本の上に、家族が10人ならびます。
その差、87歳。
数えてみたら、4世代だった
母、私、娘、孫。
4世代です。
母から見れば、ひ孫。
これが一つ屋根の下に、まるっと4日間。
考えてみれば、そう何度もあることではないのですよね。
母は89歳。孫たちは3歳と1歳7か月。
この4世代がそろう夏が、あと何回あるか。
そう思った瞬間に、これはもう「食事の用意」ではなくなりました。
DESIGN
大前提を、ひとつだけ決めた
母には、一切やらせない
献立を考える前に、決めたことがあります。
母には、一切やらせない。
母は89歳で、一人暮らしです。
台所も冷蔵庫も、母のもの。母のやり方がある。
でも、10人分です。
一人暮らしの台所に、10人が押しかける。
これは、楽しい以上に負担なのです。
「手伝おうか」と母は言うでしょう。
言わせないようにするのが、今回の私の仕事だと思っています。
だから、全部私がやる
献立を決めるのも、買い出しの段取りも、仕込みも、洗い物も。
母には、座って、ひ孫を見ていてもらう。
これが、今回の献立のいちばん大きな設計条件になりました。
そして、この一行があるかないかで、決まる献立がまるで変わったのです。
PLAN
まずは表を作った
「いつ、何人いるのか」を書き出す
決め方は、ものすごく地味です。
| 8/13夜 | 8/14 | 8/15昼 | 8/15夜 | 8/16朝 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 大人 | 4 | 6 | 6 | 8 | 4 |
| 幼児 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
見えてきますよね。
8月15日の晩だけ、大人が8人。
山を一つ決めると、残りが楽になる
ここが山場。
ここに全力を注いで、あとは流す。
そう決めた瞬間、ぐっと楽になりました。
献立って、全部の日をがんばろうとするから苦しいのです。
山を一つ決めると、残りは「山じゃない日」として扱える。
そして「山じゃない日」を手抜きすることは、
母に座っていてもらうための時間を作ることでもあるのでした。
STYLE
目指したのは「はなわ家」と
「レインボージャンボさんのお母さん」
大皿でドン。凝らない。量で圧倒する
イメージしたのは、この二つ。
大皿でドン。
ホットプレートで囲む。
凝らない。でも量で圧倒する。
おしゃれである必要は、まったくないのです。
「わー!」と声が出るかどうか。
孫が3歳と1歳7か月ですから、レストランみたいな料理は誰も見ていません。
それより、みんなで餃子を包むほうが100倍盛り上がる。
うちには「よく食べる男性」が2人います
娘の夫(38歳)と、姪の夫(33歳)。
この二人、本当によく食べるのです。
そして揃って、カレーと唐揚げが大好物。
これはもう、隠す必要のない事実です。
凝った小鉢を10品出すより、唐揚げを山にしたほうが、この二人は喜ぶ。
だから、量です
- 唐揚げ用の鶏もも肉、1回につき2kg
- カレーは大鍋で、牛こま700g
多すぎる?
いいえ、これでも8月15日の晩は足りるかどうか。
余ったら、翌朝みんなでつつけばいいのです。
最初のプランは、こうでした
8/13 夜夏野菜カレー+唐揚げ
8/14 昼そうめん大会
8/14 夜ホットプレートで餃子&お好み焼き
8/15 夜★大宴会(ちらし寿司・手巻き・唐揚げ山盛り)
われながら完璧。
……と思っていたら、ここから4回、練り直すことになりました。
練り直し その1
「18時到着で煮込みは無理でしょう」
そこから、カレー?
初日は夏野菜カレーを大鍋でドン、のはずでした。
でも冷静に考えたのです。
飛行機が18時着。
荷物を受け取って、実家に着くのは19時半か20時。
1歳7か月と3歳を連れて。
無理です。
というか、そもそもスーパーに寄る時間もない。
私が作れないなら、誰が作るのか
ここで例の大前提が効いてくるのですね。
……母です。
「もう作ってあるから」と、母は絶対に言います。89歳が、10人分を。
それだけは、させたくない。
初日は、空港で買って帰る
空港の到着ロビーのすぐ近くに、お弁当やお総菜も置いているお土産専門店があります。
夜9時まで。飛行機に乗らない人でも買えます。
ここで、焼鯖寿司、柿の葉寿司、天むす、551の焼売。
おむすびと唐揚げのセットも。
帰省初日の夜に、誰も台所に立たない。
これ、けっこう大きな発見でした。
だって、いちばん疲れている日なんですもの。
先手を打つ
そして母には、先に電話しておきます。
「初日は買って帰るから、何も作らないでね」と。
これが、89歳に何もさせないための唯一の方法です。
【メモ】真夏の車内は本当に危ないので、保冷剤だけコンビニで足してください。お寿司ものは常温です。
練り直し その2
「関西では牛肉なのです」
母の家に、豚肉は常備されていない
リストに「豚こま切れ 500g」と書いたところで、はたと止まりました。
関西で「肉」といえば、牛です。
カレーは牛。肉じゃがも牛。
それが当たり前で育ったのに、離れて暮らす年月が長くなると、するっと忘れるのですね。
というわけで、カレーは牛こまに変更。
でも、餃子とお好み焼きは豚のまま
牛ひきの餃子は、冷めるとぼそつきます。
お好み焼きは「豚玉」ですから、あの脂が生地に染みるのが身上。
ここは、こだわりというより物理です。
練り直し その3
「カレーは外せません」
カレー好きが2人、揃うのです
初日のカレーを削ったら、娘の夫が浮かびました。
彼、カレーが大好きなのです。
わざわざ集まる場で、好きなものを一つも出さないのは、ちょっと寂しい。
しかも今回は、姪の夫も来る。こちらもカレー党。
削らずに、8月15日の昼へ移した
これが、結果的にいちばん良い判断でした。
- 8月14日の午後に仕込める(餃子を包みながら、横の鍋でコトコト)
- 一晩寝かせたカレーが出せる
- そうめんも餃子もお好み焼きも、何一つ削らずに済む
初日の作りたてより、二日目の寝かせたカレー。
どう考えても、こちらのほうが美味しいのです。
削ったものは、消さずに移す。
献立を考えるときの、これはコツかもしれません。
練り直し その4
「そもそも、食べないのです」
苦手が二人。しかも、方向がまるで違った
- 娘の夫は、かぼちゃやさつまいもなど甘い野菜が苦手
- 孫息子(3歳)は、カレーも餃子も食べない
夏野菜カレー、詰みました。
大人のほうは、まだ何とかなります。
問題は、3歳です。
大人には「別皿にする」
なすとズッキーニは、鍋に入れない。
素揚げして、大皿に盛って、後のせ。
- 苦手な人 → のせない
- 好きな人(姉、母、娘)→ たっぷりのせる
これなら、誰も我慢しない。
しかも見た目は夏らしくて、「夏野菜カレー」の顔は保てます。
かぼちゃは、潔く諦めた
これは取り分けでは逃げられません。
かぼちゃは煮崩れて、ルウ全体を甘くしてしまう。
一人が苦手なら、鍋ごと苦手になるのです。
だから、外しました。
3歳には、紛れ込ませようがない
最初、私はこう考えていました。
玉ねぎとにんじんをすりおろして鍋へ。
カレーは色が濃いから、溶けてしまえば気づかない。
本人は「じゃがいもとお肉のカレー」を食べているつもり——。
われながら名案。
……と思ったところで、気づきました。
そもそも、カレーを食べないのです。
餃子も食べません。
好きなのは、ごはん、鮭フレーク、焼き魚、焼き鳥のつくね。
紛れ込ませる先が、ないのでした。
でも、麺は大好きだった
ここで道が開けました。
そうめんは食べる。焼きそばも食べる。
麺なら大丈夫なのです。
ということは、8月14日の昼のそうめん大会は、そのまま参加できます。
鉄板の端で、焼きそばを焼く
問題は、餃子とお好み焼きの夜です。
ここで「じゃあ先にごはんを食べさせておこう」とやってしまうと、
その子だけ、集まりの外に出ることになる。
それは違うな、と思ったのです。
ホットプレートなのですから、端で焼きそばを焼けばいい。
同じ鉄板。同じ場所。同じジュージューという音。
食べているものだけが、違う。
しかも焼きそばなら、大人も手を伸ばします。
「あの子だけ特別」にならない。ここが大事なところでした。
そして餃子を包む作業には、ちゃんと参加できます。
食べないけれど、作る側にはいられる。
結局、手を打つのは2食だけだった
こうして並べ直してみると、彼が困るのは8月15日の昼と夜だけでした。
- 8/13 夜 … 塩むすびと鮭フレーク
- 8/14 昼 … そうめん(短く切る)
- 8/14 夜 … 鉄板の端で焼きそば
- 8/15 昼 … カレーの日。ごはん+鮭フレーク+つくね
- 8/15 夜 … 宴会の日。同じくつくね
- 8/16 朝 … 鮭フレークごはん
つくねは、8月14日の午後に多めに作っておきます。
餃子を包むついでに、丸めればいいのですから。
ここでも彼は、作る側にいられます。
【メモ】鮭フレークは大瓶で、予備をもう1瓶。ここが崩れると全部が崩れますので、切らさないことがいちばん大事です。
INSIGHT
で、気づいたこと
献立は、足し算じゃなくて引き算で決まる
最初、私は「何を作ろう」と考えていました。
豪華にしよう、喜ばせよう、と。
でも実際に効いたのは、全部「引いた」判断でした。
- 初日の調理を引いた(→空港で買う)
- かぼちゃを引いた(→一人の苦手が全員に響く)
- 野菜を鍋から引いた(→別皿にした)
- 3歳をカレーから引いた(→鉄板の端で焼きそば)
- 8月15日の昼を軽く……しようとして、やめた
ただし、引きすぎもまた失敗
夜が宴会だから昼は軽く、と思ったのですけど、
12時と18時半なら6時間あきます。
昼を軽くしすぎると、宴会の前に子どもたちが持たない。
RESULT
最終形
4日間の献立
8/13 木・夜
空港で調達。焼鯖寿司、柿の葉寿司、天むす、551の焼売。家では味噌汁だけ。
8/14 金
朝|おにぎり(鮭フレーク・梅)、味噌汁、卵焼き。
昼|そうめん大会。薬味を小皿にずらり。唐揚げとちくわ天。
午後|みんなで餃子を包む。横でカレーを仕込む。つくねも丸めておく。
夜|ホットプレートで餃子&お好み焼き。鉄板の端で、3歳用に焼きそば。
8/15 土
朝|焼き鮭、卵、味噌汁、ごはん。
昼|牛カレー(一晩寝かせ)。素揚げは別皿。辛口ルウは大人用に別鍋。3歳はごはんと鮭フレークとつくね。
夜|★大宴会。ちらし寿司、手巻き、唐揚げ山盛り、茶碗蒸し、スイカ。
8/16 日・朝
パンとヨーグルトと果物。片づけ優先。
朝は、抜きません
並べ直していて、危うく朝を落とすところでした。
夜が大皿でドンドン続きますから、つい「朝は軽くていいか」となるのです。
でも、私はしっかり食べます。母も食べます。
そして何より、3歳と1歳7か月は、朝を抜くと昼まで持ちません。
ですから、2日目と3日目の朝は、きちんと出します。
といっても、おにぎりと味噌汁と卵。焼き鮭と味噌汁とごはん。それだけです。
手をかけないことと、抜くことは違うのですよね。
買い出しは2回。どちらも車を出してもらう
8月14日の午前と、15日の朝。
14日から姉と姪が合流しますから、そこはもう遠慮せずお願いする。
スイカ1玉は重いですし、刺身は当日の朝がいい。
「全部私がやる」は「一人でやる」ではない
母にやらせないために、若い人に頼む。
66歳が一人で抱え込んだら、結局そこで倒れて、母が心配するだけですものね。
SAFETY
最後に、真面目な話をひとつ
楽しい記事にするつもりだったのですけど、これだけは書かせてください。
87歳の年齢差がある食卓は、危険もいちばん幅が広い。
1歳7か月と3歳に、したこと
- ミニトマトは必ず4つ割り(半分でも足りません)
- ぶどうは半分に
- こんにゃく、ナッツ、餅は出さない
- そうめんは短く切る(麺が好きな子ほど、すすった勢いで気管に入ります)
- スイカは種を取って小さめに
- カレーはルウを入れる前に煮汁と具を取り分け
89歳の母に、したこと
- 唐揚げはそぎ切りで小さめのものを、数個よけておく
- 茶碗蒸しを一品入れておく
大皿は「みんな同じものを取る」前提でできている
大皿料理は楽しいのですけど、その前提が成り立たない人が、うちには3人いる。
だから、小皿を用意する。
鉄板の端を空けておく。
それだけのことです。
そして4世代がそろうということは、
「同じものを食べられない人」が両端にいるということでもあるのですね。
いちばん上と、いちばん下。
ここに気を配れば、真ん中の6人は勝手に楽しくやってくれます。
OUTRO
苦手は、献立が決まる理由
4回も練り直したおかげで、こんなことがわかりました。
苦手な人がいるのは、献立が壊れる理由ではなくて、献立が決まる理由なのです。
娘の夫がカレー好きでなければ、あの「一晩寝かせたカレー」は生まれませんでした。
孫がカレーを食べる子だったら、鉄板の端は空けなかった。
母が89歳でなければ、初日に空港で買って帰るなんて考えもしなかった。
全員の「好き」と「苦手」を並べていくと、
そこにしかない献立が、勝手に立ち上がってくる。
4世代の食卓は、たぶん、そういうものなのでしょう。
さて、あとは作るだけです。
餃子を包む3歳の手と、
それを見ている89歳の顔を想像すると、
今からちょっと楽しみです。
(結果は、帰ってきたらまた書きますね)

