Audibleで、西川美和さんの『永い言い訳』を聴き終えました。
突然の事故で妻を亡くした、ふたりの夫の話です。
ひとりは小説家。衣笠幸夫という名前で、あの衣笠祥雄と同姓同名。それだけで、ずっと息苦しさを抱えて生きてきた人です。
子どもはなく、夫婦の関係はとうに冷え切っている。妻が亡くなったあと、携帯に残されていたのは「愛していない」というメッセージ。
世間は、悲しみに打ちひしがれた夫の姿を期待する。でも、その期待に応えられるほどの感情がない。むしろ妻の死を、自分への報復のように受け止めてしまうのです。
小説家だから、書くことには正直です。
でも、正直であることと、真実であることは違う。インタビューで、愛していなかった妻への本音が、ぽろりと出てしまう。愛していないという現実を言葉にしたら、こんなにも残酷になってしまうのか、と思いました。
もうひとりは、幼い子どもふたりを抱えた、トラック運転手の夫。
こちらは、妻を愛していた。愛していたから、失った悲しみに正直に崩れていく。家事もままならず、やがて小説家の夫に、子どもたちの世話を頼るようになります。
どちらの夫も、あまりに正直すぎて、聴いていて先が想像できませんでした。この人たち、この先どこへ行き着くんだろう、と。
でも、永い時間が必要だったのですね。
不器用な、残された者同士。残された子どもたちに支えられながら、少しずつ、妻のこと、死のこと、自分自身のことと向き合っていく。
その「永い言い訳」を、ちゃんと最後まで聞けて、納得しました。
家族、夫婦、親子。
深く考えて、反省して、たどり着いた場所。それは――生きるとは、誰かのためにすることなのだ、ということ。
小説家の夫が、もう一人の夫の子どもに、自分の後悔をしっかり伝えて諭す。あの言葉は、本物でした。
不器用な正直さを、まるごと出して。それを素直に受け入れながら、深く考えさせられる。
そんな一冊でした。

