韓国映画『オアシス』通じ合っても理解されずにもどかしい でもあたたかくなる

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友人に「これはぜひ観てほしい」とすすめられて、韓国映画『オアシス』をNetflixで観ました。

二人の間ではしっかり通じ合っているのに、周りの人にはまったく理解されない。そのもどかしさに胸がしめつけられながらも、最後には希望が残る。心に迫る純愛の物語でした。

『オアシス』はこんな映画

『オアシス』は、2002年に公開された韓国映画です。監督は、『ペパーミント・キャンディー』や『ポエトリー アグネスの詩』で知られるイ・チャンドン監督。

主人公のジョンドゥ(ソル・ギョング)は、刑務所を出たばかりの青年です。気が利かず、場の空気も読めず、家族からも厄介者あつかいされています。

そのジョンドゥが出会うのが、脳性麻痺のある女性コンジュ(ムン・ソリ)です。コンジュは、アパートの一室でひとり、ほとんど外に出ることもなく暮らしています。

はじめは、ジョンドゥが一方的に想いを寄せ、強引に近づいていきます。けれども、コンジュは彼の純粋なやさしさに気がつき、二人は心を通わせるようになるのです。それは、きわめて短いあいだのできごとでした。

この作品で、イ・チャンドン監督はヴェネツィア国際映画祭の監督賞を、ムン・ソリは新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)を受賞しています。

はじめは「怪しい」とドキドキしながら

正直に書きますと、観はじめてしばらくは「この人、大丈夫なのかしら」と、ずっとドキドキしていました。

ジョンドゥの行動は危なっかしく、コンジュとの最初の出会い方も、決してほめられたものではありません。前科があるという設定も重なって、観ている私自身が、すっかり身構えてしまっていたのです。

ところが、物語が進むにつれて、その見え方が変わっていきました。

コンジュのことを「障害のある人」ではなく、ひとりの女性として見ていたのは、ジョンドゥだけでした。そしてコンジュもまた、周りから見放されたジョンドゥを、まっすぐに受け止めていたのです。

気がつけば、これは純愛の物語なのだとわかり、ドキドキは切なさに変わっていました。

通じ合っているのに、わかってもらえない

この映画でいちばん心に残ったのは、そのもどかしさです。

二人の間では、気持ちはしっかり通じ合っています。コンジュが言葉をうまく発することができなくても、ジョンドゥとコンジュはお互いのことをちゃんとわかっているのです。

ところが、周りの人たちには、二人が通じ合っているということが理解されません。そこが、とてももどかしいのです。

とくにコンジュのもどかしさは、胸に迫りました。ジョンドゥとなら、ちゃんと気持ちが通じ合う。それなのに、いちばん身近なはずの家族は、彼女の言葉をちゃんと聴いてくれず、思いを察してもくれないのです。彼とはちゃんと通じ合えているのですから、通じないのは彼女のせいではありません。

貼られてしまうレッテル

この映画を観て、あらためて思いました。人はいちどレッテルを貼ると、その目でしか相手を見なくなってしまうものです。

前科のある人には、「またなにかをやらかすに違いない」というレッテルが貼られます。ジョンドゥがどんなに一生懸命でも、周りの人たちはまずその目で彼を見てしまうのです。

これは映画の中だけの話ではないと思います。私たちも、知らず知らずのうちに、だれかを肩書きや見た目で判断してしまっていることがあるのではないでしょうか。はじめに「怪しい」と身構えていた私自身も、そのひとりだったのかもしれません。

俳優さんたちの演技に引き込まれました

二人の俳優さんの演技は、本当にすばらしいものでした。

ムン・ソリさんが演じるコンジュは、体の動きも、表情も、話し方も、演技であることを忘れてしまうほどです。そのコンジュが、空想の場面では、障害のない女性としてちゃんと描かれています。すっと立ち上がり、自由に動き、ジョンドゥと言葉を交わすコンジュの姿が、はっきりと画面に映し出されるのです。その場面には、胸がいっぱいになりました。

ソル・ギョングさんのジョンドゥも、不器用で、どこか子どものようで、目が離せません。最初は危なっかしく見えていたその姿が、最後には、とてもいとおしく見えてくるのです。

二人を応援したくなる結末

※ここから少しだけ、結末にふれます。

二人は結ばれることなく、離ればなれになります。

でも、その先にははっきりと希望が見える、すてきな終わり方でした。最後は、まるで『幸福の黄色いハンカチ』のような気分になりました。

観終わって、二人を応援するあたたかい気持ちになりました。

おわりに

もどかしいけれど、希望のある、心に迫る純愛の物語でした。重いテーマの映画ではありますが、観終わったあとに残ったのは、つらさではありませんでした。

すすめてくれた友人に、心から感謝しています。ひとりでは、きっと手に取らなかった一本です。

人を見かけや肩書きで決めつけていないか。大切な人に、思いをちゃんと伝えられているか。そんなことを、静かに考えさせてくれる映画でした。

まだご覧になっていない方には、ぜひ一度観ていただきたいと思います。通じ合う二人のもどかしさと、その先にある希望を、きっと感じていただけると思います。