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【ネタバレ注意】 この記事は、物語の大きな展開や主人公の過去に触れています。これから読む・観る予定の方はご注意ください。
「新しい医療の物語」だと思っていました
久坂部羊さんの『廃用身』を、Audibleで聴きました。
前半を聴きながら、私はすっかり「新しい医療が始まる物語」だと思いこんでいました。高齢者医療に新しい道を切り開こうとする医師が、壁にぶつかりながら奮闘する。そんな、医師の活躍と葛藤のお話だろう、と。
途中で映画化されていると知り、Amazonプライム・ビデオで先に映画を観てみました。すると、思っていたのとはまるで違う方向に進んでいく物語に、とても驚きました。
実話かと思うほど引き込まれて
聴いているあいだ、これは本当にあった話ではないかと思うほど没入していました。
主人公の漆原医師には、共感したり、尊敬したり、そして途中からは恐ろしくなったり。ほかの登場人物にも、同情したり、憤ったり。聴き終えるまで、気持ちが休まる暇がありませんでした。
漆原医師に感心したところ
高齢者一人ひとりと真剣に向き合う姿。そして、医療だけでなく、介護の問題までしっかり見据えながら医療に向き合おうとする姿勢。前半の漆原医師には、素直に感心しました。
現実を追いかけてくれる記者の存在も、心強かったです。この人が味方にいてくれて良かった、と思いながら聴いていました。
見方が変われば、正反対に
だからこそ、漆原医師の幼少期の残酷な一面が明かされたときは、正直つらかったです。そんな一面は持っていてほしくなかった。純粋に、ここまで高齢者のことを考えてくれる先生だと思っていたかった。
でも、あとから振り返ると、あの真摯さもまた、嘘ではなかったのだろうと思います。人にはいろいろな側面があって、見方が変われば正反対に映ることもある。そのことが、この作品でいちばん怖く感じた部分かもしれません。
作中の小説に、胸がしめつけられて
物語の途中に出てくる小説は、認知症と介護の恐ろしさを突きつめたような内容で、聴いていていたたまれない気持ちになりました。このあたりは、心に余裕のあるときに聴くのがよさそうです。
遠い話ではなかった
私の母も周りの人たちも、年を重ねてもまだ元気でいてくれています。本当にありがたいことです。
だからこそ、高齢化や介護の問題を、どこか自分とは関係のない遠い話のように感じていたのかもしれません。この作品は、その底知れない問題を、ぐっと目の前まで連れてきました。
自分も、できるだけ介護に頼らずに暮らせるようにしたい。聴き終えて、そう身に染みて思いました。
怖さが先に立ったのは本当です。けれど、自分のこれからを真剣に考えるきっかけをもらえたのは、きっと悪いことではないはずです。今できることから、少しずつ備えていこうと思います。
こんな方におすすめ
- 医療や介護をテーマにした小説が好きな方
- 「善意」と「怖さ」の境目について考えてみたい方
- 親の介護や、自分のこれからが気になりはじめた方
重いテーマではありますが、だからこそ心に長く残る一冊です。原作と映画、両方で味わってみるのもおすすめです。
原作と映画は、こちらから
私は原作をAudibleで聴き、映画はAmazonプライム・ビデオで観ました。耳で聴くと、漆原医師の手記を本人から打ち明けられているような感覚があり、物語にぐっと引き込まれました。
私自身、漆原医師が高齢者一人ひとりと向き合う心がけに感動したので、今度は書籍で、あらためてじっくり読み直したいと思っています。耳で聴いたときには流れていった言葉も、文字で追うと、また違った重みで心に届きそうです。気持ちが重くなりそうなときに、少し立ち止まって読み進められるのも、本ならではのよさです。
映画は、原作を知ってから観ても、先に観てから原作に戻っても楽しめます。私のように映画で全体の流れをつかんでから聴くと、場面が目に浮かびやすくなりました。

