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小野不由美さんの十二国記シリーズ、Episode 5『丕緒の鳥(ひしょのとり)』を、Audibleで聴き終えました。
これまでの作品は、王や麒麟が中心のお話でした。今回は、そんな国を支える「名もない人たち」が主人公です。4つのお話が入った短編集なのですが、聴き終えたとき、自分も「いい人になりたい」と思ってしまったのです。

4つのお話が入った一冊
『丕緒の鳥』に入っているお話
「丕緒の鳥」「落照の獄(らくしょうのごく)」「青条の蘭(せいじょうのらん)」「風信(ふうしん)」の4編です。自分の役割を果たそうと悩みながら、懸命に生きる人たちが描かれています。
職人がつくる、心に残る「的」
表題作の「丕緒の鳥」は、新しい王が位につくときの儀式で射る、鳥の形をした焼き物の的をつくる職人のお話です。
射た人が、射たことを思わず後悔してしまうような的。それはいったい、どんなものなのでしょう。作者が目の前に思い描いている姿が、私の頭に浮かんだものと同じなのかどうか。できることなら、実際にこの目で見てみたい気持ちになりました。
重いテーマに、いっしょに悩んだ「落照の獄」
「落照の獄」は、死刑をめぐるお話です。罪を裁く立場の人たちの葛藤が、痛いほど伝わってきました。
本来は、人が立ち直るのを助けるための役割のはずです。それなのに、目の前には、立ち直る余地さえ考えさせてくれない殺人犯がいる。どれだけ言葉を尽くしても、どうしようもない。
善が悪に勝てないのではないか。そんな辛さを、物語の人たちといっしょに考えながら聴いていました。
祈るように聴いた「青条の蘭」

「青条の蘭」は、国と民を守るために、自然の脅威から国を守ろうとする男のお話です。
その崇高な思いに、すっかり感動してしまいました。たったひとりの思いが、どうかつながりますように。そう祈るような気持ちで聴いていたのです。
いい人に出会えた「風信」
「風信」は、国が荒れた時代に、戦乱で家族を失ってしまった少女のお話です。
行き場をなくした少女が身を寄せたのは、暦(こよみ)をつくる人たちのところでした。彼らは毎日、空の様子や鳥、虫の動きをじっと観察して、暦を整えていきます。
世の中がこんなに荒れているのに、この人たちは鳥や虫ばかり見ている。少女は、はじめはそのことに戸惑います。けれど、その地道な仕事が、季節を知って田畑を耕す民の暮らしを、静かに支えていたのです。
苦しいことの多い少女ですが、そんな人たちに出会えて、本当によかったと思いました。派手なことは何もしなくても、自分の持ち場で黙々と役割を果たす人たちがいる。その姿が、少女の心を少しずつほどいていくように感じました。
善い循環が、民を救う
4つのお話を聴き終えて感じたのは、どれも「善い循環が民を救う」という物語だったということです。
王や麒麟のような特別な人でなくても、それぞれが自分の役割を果たそうとする。その思いが少しずつつながって、国や人を救っていく。
理想は高く持って、多くの人のために尽くしたい。そして何より、いい人になりたい。素直にそう思えた一冊でした。
へえ! シリーズの中での位置
『丕緒の鳥』は、新潮文庫の十二国記シリーズの5作目です。4編のうち2編は、この本のための書き下ろしなのだとか。王や麒麟ではなく、名もない人たちに光を当てた、シリーズの中でも少し特別な一冊です。
Audibleで聴いてみたい方へ
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