十二国記『東の海神 西の滄海』。まっすぐな思いと友情

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【ご注意】この記事は、物語の設定と、登場人物の心の動きについて触れています。結末のくわしい内容には触れていません。

小野不由美さんの十二国記シリーズ『東の海神 西の滄海(ひがしのわだつみ にしのそうかい)』を、Audibleで聴き終えました。

『月の影 影の海』『風の海 迷宮の岸』に続く、シリーズのEpisode 3です。正直に言うと、これまでの2作より、ずっと難しいお話でした。それでも、聴き終えたあとには、胸の奥に残るものがありました。

どんなお話?

舞台は、十二国のひとつ・雁国(えんこく)です。

王の尚隆(しょうりゅう)と、王を選んだ麒麟の六太(ろくた)が誓約を結んでから、二十年。先の王の圧政で荒れ果てていた国は、少しずつ平穏を取り戻しつつありました。

そこへ、尚隆の政策に反対する者が六太をさらい、謀反を起こします。その目的は、国の平和なのか、それとも王の座を奪うことなのか。二人の男の理想のどちらが、民を本当の安らぎへ導くのかが問われていきます。

日本の村上、小松、瀬戸内が出てくる

聴いていて驚いたのは、日本の村上、小松、瀬戸内といった名前が出てきたことです。

実は、尚隆と六太は、もともと日本の生まれです。尚隆は瀬戸内の小松という家の跡取り、六太は戦乱の時代に育った子どもでした。日本での遠い過去と、雁国での今とを行き来しながら、物語は進んでいきます。

耳だけでは、人物の関係が難しかった

このお話は、登場人物が多く、名前もなじみのない読み方ばかりです。耳だけで聴いていると、誰が誰で、どういう関係なのかをつかむのに苦労しました。

これから聴く方のために、主な人物を整理しておきます。

主な登場人物

  • 尚隆(しょうりゅう)……雁国の王(延王)。日本では瀬戸内の小松家の跡取りでした。
  • 六太(ろくた)……尚隆を王に選んだ麒麟(延麒)。日本で人の子として育ちました。
  • 斡由(あつゆ)……尚隆のやり方に反対し、謀反を起こす人物。
  • 更夜(こうや)……斡由に仕える青年。六太とは、子どものころに出会っています。

この4人の関係が頭に入っていると、ぐっと聴きやすくなると思います。

更夜のまっすぐな思いに、胸が苦しくなる

いちばん心に残ったのは、更夜という青年です。

更夜は、仕える相手の役に立とうと、純粋に、まっすぐに行動します。その姿は、聴いていてとても良いことのように思えました。

けれど、その相手が現実に何をしているのかが見えてくると、いたたまれない気持ちになりました。更夜の純粋さを思うほど、胸が苦しくなったのです。

一瞬の友情が、救いになった

物語の行方がどうなるのか、聴いていて怖くなる場面もありました。

それでも、六太と更夜のあいだに、ほんの一瞬でも芽生えた友情があった。その友情が、最後に救いをもたらしてくれたことに、心から安堵しました。

難しいお話だったからこそ、その救いがいっそう胸にしみたのだと思います。

争いを通して描かれるもの

これまでの2作とくらべて、この作品には争いが多く出てきます。けれど、その争いを通して描かれているのは、もっと大きなテーマなのだと思いました。

ひとつは、国とは何か、王とは何かということです。尚隆も斡由も、どちらも「国のため」を掲げます。それでも、その中身はまったく違います。国は誰のためにあり、上に立つ者は何をすべきなのか。そこが問われています。

もうひとつは、トップと、そこに仕える者とのあいだにあるものです。同じ「仕える」でも、主が何を考えているかによって、仕える者の運命は大きく変わってしまいます。更夜のまっすぐな思いが胸に痛かったのは、その差が見えてきたからなのかもしれません。

そして、友情です。国や主従という大きな枠組みの中で、立場の違う二人が一瞬でも心を通わせる。その小さなつながりが、物語の救いになっていました。

争いを嫌う麒麟である六太が、争いのただ中に置かれる苦しさも、この作品ならではの読みどころです。

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